パステルアートのワークショップ中、参加者様の「うまくできない」「思ったように描けなかった…」にどう関わるか、その考え方をお話します。
出来映えが気に入らないみたい…
ワークショップが終わって、ニッコリして作品を大事そうに持って帰られる参加者様の姿…。すべての「ものづくり」の講師にとって、これほど嬉しく報われる瞬間はないでしょう。次回への活力になる光景でもあります。

これは掛け値なしにそう!

ですね~!これがあるから、努力も報われるって思いました。
全ての参加者様をそんな風に出来ればいいのですが、十人十色の参加者様。時には「気に入らない…」「うまく出来なかった」とご自身の作品に対してネガティブになられる方もいらっしゃるでしょう。そんな時の対処例を五つご紹介します。

ど…どうしよう。
参加者様を動かす
こちらは製作途中でこのモードになった場合に有効です。パステルアートは紙(キャンバス)が小さいです。お手元だけを注視しているせいで近視眼的な見方しか出来なくなって煮詰まっているのかも知れません。
そんな時は、一旦顔を上にあげて、キョロキョロ・ウロウロしてもらいましょう。周りの他の方のやり方を見てもらうと「あら、みんな意外とバラバラで違うのね、でもそれぞれ素敵」「私のも思ったよりよかったわ」と気付いて頂けます。「この色・レイアウトもいいわね」と新しいやり方を取り入れて前に進めるかも知れません。

マジメな参加者様ほどなりがち。肩の力を抜かせてあげて。
紙を動かす
紙(キャンバス)が机の上にある状態でずーっと向き合っていると、上に書いた場合と同じく、見え方が固定化されてしまいます。一旦ちょっと紙を離れた場所の壁に立てかけたり、ミニイーゼルに乗せたりしてみて下さい。
飾られた時の状態で改めて眺めると、完成形を客観的にイメージすることが出来ます。90度タテに動かすだけですが視点がガラっと変わるので、改善点や、思ったよりも気に入る点を発見できるはずです。終了後の鑑賞用にも、ミニイーゼルはあると便利です。お荷物に空きがあれば是非。

木製やワイヤー製のちっちゃいイーゼル、よく百均で見ますよね。折りたためるし試しに持っていこうっと。
フレームに入れる
物販を勧めましょうという意味ではありません。額の販売をやっているならそのサンプルに入れてあげたり、ない場合にはフレームに見立てられるきれいな紙に作品を配置して、その場で飾って見せてあげてください。
フチがあることで作品の「見栄え」がグッと上がることを体感として分かって頂ければ、持ち帰った後にも満足度アップのために出来ることがある、と前向きな気持ちになって頂けます。

例えば、真っ黒の色紙でも、背景として作品を乗せたらすっごい引き立て役になるからオススメ!
誰だって本当はご自分の作品がいとおしいのです。台紙に置くなら何色が合うかな?フレームはどんな素材にしようかな?と一緒に考えてあげれば、嬉しい気持ちでお帰り頂けます。もちろん、物販をしていれば、その提案が売り上げにつながるかも知れません。

フレームも「試着」できれば自宅で飾るイメージが湧くし、そっちの意味でもいいですよね。サンプル持って行ってみようかな…(重いけど)。
褒め合いをさせる
「先生は、誰だって褒めるのがお仕事だから…」と講師の言葉が届かない場合もあるかも知れません。

え~っ!?そんな事ないのに…。
そんな時に効力があるのは「利害関係のない他人の誉め言葉」です。一斉に終わるタイプのワークショップでは、鑑賞し合う時間を設けてください。

これはゼッタイ!あった方がいいですよ~!表現したくて来てる人達なんだから、なんだかんだ言って人には見せたいもの。小さなお披露目会ですね。
人は、自分にはないものをうらやましく思うものです。小さく描く方は大胆さに、濃い色遣いをする方は淡い色遣いに感心して「いいわねえ」と言ってくれます。そうすると、「そういう見方もあるのね」と気持ちが上向いてくれます。人通りがある場所なら足を止めた通行人に、会場の管理者がのぞきに来るならそういった人に「見てください、素敵でしょう」と話をふってもいいですね。

ギャラリーはぐいぐい味方につけちゃいましょう。

のぞき込んでおられた通りすがりのおじさん、お話振ったらいい反応くださいました。講師が声を掛けなかったら発生しないおしゃべりもあるかもだから、勇気を出して人と人をつなぐのも大事なんですね。
未来の可能性に言及する
どれほど視点を変えても、別の価値観の言葉をもらっても、ご自身の作品へのネガティブな評価が変わらない場合…。

もう…どうすれば…(フリーズ)

大丈夫。あたふたせずにゆったりとした態度で伝えてあげて欲しいことがあります。フリーズしてても顔には出さないで!
今、そう思うことはそのままにしておきましょう!それよりも、もっと違う可能性に目を向けさせて下さい。いっそのこと、気に入らないなら数か月目に触れないようにして、後から「まったくの他人の作品」として見てみると、見え方がガラリと変わっているはずです。「私もそうなのですが…忘れた頃に見てみると、見え方が変わっていますよ。やってみてくださいね」という言葉をプレゼントすれば、「そうなのかも」という希望のタネを持って帰って頂けます。
講師のメッセージは大切
以上、5つの対処例を紹介しましたが、その方その方の自己肯定感が大きく関わってくる部分なので、なかなか方程式のようには簡単に影響を与えることが出来ないかも知れません。
ですが、「講師がこう言った」ということは、必ず一定以上の重みを持って相手の心に残るものです。ふとした時に「そういえば…」と思い出して頂けるでしょう。目に見えて伝わったと感じられなくても、言葉は大切に届けてあげてください。

講師の言葉は、「祝福」になるってこと。
ガッカリも受け止めて
また、参加者様の落ち込みやガッカリ感は、こちらで引き受けるようにしましょう。あなたにも経験ありませんか?本当はモヤモヤしているのに、講師に気を使ってゴキゲンなふりをすると、帰ってからさらにモヤモヤ…なんてこと。

(確かにあるかも…。持って帰ってからも作品に対する気持ちがビミョーになっちゃったなぁ。)
そう思わせないように、気に入らなかった部分もちゃんと講師に預けさせるよう、その方が吐き出すお気持ちを受け止め、尊重する姿勢を示しましょう。「う~ん…」と微妙なご様子なら、「気になるところがありますか?」とスッと拾ってあげてください。

その後、どうご希望に沿ってリカバリーするかは講師のウデと、何より「粘り強さ」。千本ノックと思って球を拾い続けましょう!やらないよりやった方がゼッタイお互いのためにイイですよ。
「楽しかったわ、ありがとう」も「うまくいかなかったわ…残念」も、等しくその場の責任者である講師が受け取るべき結果です。

謙虚な気持ちで向き合わないとですね…。
それに、ワークショップは作品作りだけではなく、人との関わりを楽しむ場でもあります。うまくいかないことがあっても、そこで講師が一緒に残念な気持ちをくみ取ってくれた、寄り添った提案をしてくれた…という経験が残れば、気に入らない出来映えにもプラスの要素が加味されます。参加者様が後から開いて心が温かくなるような、良い「お土産」を渡してあげてくださいね!
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